適当が通用しない注文品、作りました。
作業は三工程
洋裁は縫うことがメインの仕事だと思われていますが、実はちがいます。
縫うのは最後の仕上げにすぎません。
縫うところまで行ったらもう後始末と考えてもいいくらいです。
作るものを決めてから仕上げるまでの工程を紹介します。
1 コンセプトを明確にする
まず前提となるのは、何のために何を作るか、のコンセプトを確認することから始めます。
普段は分かり切っているので、いちいち確認しませんが、実は、これがしっかりしていないと、作業を始めてからも迷いがおきて、スピ―ドがおちます。
デザインも材料選びもこれで決まりますからね。
注文品を作るにはコンセプトの転換が必要だった
今まで作ったものは大きいものから小さなものまで100点くらいあると思いますが、ほとんど手元には残っていないので、誰かが使うために作ったものです。
でも、帯を利用して簡単にできる範囲で作ったものばかりです。
帯の幅、生地、織り方、色、柄の出かた、などを最大限利用して楽をしていたのです。
実は、注文品もその範囲でした。
ところが、今回は、iPad Pro という厳然とした規格に合わせなければなりません。
サイズからして、帯の幅も長さもそのままでは生かしようがないのです💦
手提げバッグとは違い、実用最優先です。
使いやすさと中のiPad Proという精密機器の安全保証が最優先、遊びの要素は二の次です。
もう、見た目はおいて、自分が使うならどうだろうか、という一点だけを基準に考えました。
すると、お洒落手提げとは違う次のような工夫点が見えてきした。
しなやかで厚い芯地
落としても大丈夫なようにクッションのあるしっかりした芯が必要です。
しっかりしていて、しかも、柔軟なものがいいですよね。
厚くて、軽くて、しなやか。
ポリウレタンを探したのですが見つけられませんでした。
そこで、パッチワーク用の厚手の接着芯を、表布と裏布の両方に貼りました。
蓋をつける
万が一落とした時、中身がそとへ飛び出すことは避けたいので、蓋をつける方がいいでしょう。
もともと、帯幅では足りないので、帯は横に使います。
蓋の部分は別に裁ってつけ足します。
帯は締めた時おなかに当たる部分が、半分に折り目が入っているので、その部分を蓋に利用しました。
利用できるものは最大限利用するというスタンスは健在です(笑)
ファスナーよりボタン
出し入れが簡単なのが何よりです。
ファスナーだと途中で引っかかってしまうこともあります。
ボタンにしました。
といっても、洋服につけるようなものではなく、生地に穴をあけて差し込んでしっかりつける物なので、外観を損なうことのないよう一工夫です。
裏に皮布を挟んでしっかり固定させました。
表からは分かりません。
経験からやや大きめに作る
やや大きめ。
ここで本領発揮です。
既製品の再利用のメリットは、この、「やや大きめ」にそのまま使えるところです。
この「やや」がないと使い勝手が悪いのです。
あまりピッチリだと出し入れが大変です。
あまり余裕がありすぎると、ケースとしての安定感が生まれません。
この微妙な余裕、「さすが」と思われがちですが、これがなぜか既製品の味、ちょうどいい具合になるのです。
2 材料をそろえ、準備する
1 帯地の裁断
帯地の表と裏布を外し、中の芯を取り出しておく。
裁断するところにあらかじめボンドを塗り、ほつれ止めをしておきます。
ボンドが乾いたら、裁断する。
2 ボンドを乾かしている間に裏布、接着芯を裁断
3 接着芯を裏布に貼る。
4 裏布の蓋になる方にボタンを取り付ける。
強化のために、皮布を挟みます。
皮布がなければ帯の表地の切れ端を利用してもいいですね。
5 表布に接着芯を貼る。
3 仕上げ
いよいよ、ミシンで仕上げます。
工作なら、最後にノリで貼り合わせる段階ですね。
1 袋部分と蓋部分をはぎ合わせる
表と裏、別々にはぎます。
2 袋に縫う。
表地の袋と、裏地の袋を別々に作ります。
それぞれ、底の両角を三角に縫って厚みを出します。
3 表と裏を縫い合わせる
ケースが一体になりました。
4 本体にボタンをつける
蓋のボタン位置より少し(5㎜から1㎝)上にボタンを付けます。
今度は、表布、芯地二枚分、裏布をすっかり挟んでつけます。
完成です。
帯地はしっかりしていて、豪華にも見えるので、ケースにはピッタリです。